延命姫(中将姫)

晴明公に片恋をし、報われぬ想いのために鬼となってしまった延命姫。
そもそも延命姫のことを知ったのは、1994〜5年に高原豊明氏が自費出版された『写真集・安倍晴明伝説』からでした。
その中で千葉県銚子市に「通蓮洞跡」という断崖があります。晴明公が太平洋に飛び込むと見せかけて、延命姫の後追い自殺を
誘ったという逸話が残っている場所です。最初は「え〜、なんか晴明公らしくもないことするなぁ」と思ったものですが、
考えて調べていくうちに“延命姫”という普通の姫君には付けそうもない名前からして「もしかしてこの人…
妖怪とか、鬼の類だったんじゃ…」と思うようになったのです。

高原氏の話によれば、延命姫は元々は長者の娘だっだそうです。それがある時銚子市に来ていた晴明公に恋をしたと。
しかし一夫多妻だったこの時代には珍しく、晴明公は彼女の気持ちを受け取らなかったそうです。
(このへんからも、晴明公は奥方さまオンリーだったと、私は思いたい…)
自分になびかない晴明公を、それでも諦めきれずにいた延命姫は、ついには鬼の身となり果て彼を追いかけます。
そして、さきほど書いた「通蓮洞跡」の崖から落ちて死んだというのが、この逸話のあらましです。
なんだか、この話を知って『安珍と清姫』を思い出してしまったのは、私だけではないはず。実らぬ恋をした女というのは、どうしてこうも…。

現在は、延命姫の髪を祀った神社が、この崖の近くにあるそうです。

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